毒多の戯れ言

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zoom RSS 「「個性」を煽られる子どもたち-親密圏の変容を考える」  土井隆義著(岩波ブックレットNO633)

<<   作成日時 : 2006/04/05 13:17   >>

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 「いい歌」として、合唱や「みんなで歌おう」という場面でよく選曲されるSMAPの『世界で一つだけの花』。この歌を歌うことを躊躇させ、聞いたときに妙に白けさせてくれる本である。
 なんだかな、今の子どもたちの悲しくも納得のいく分析に出会ってしまった。子どもたちの「感性」は幼児のころからの発達に非常に関係すると思うので人ごとではないよなぁ。
 『世界で一つだけの花』なんかに代表されるように、社会から個性的(ONLY ONE)でなければ価値がないと煽られ子どもたちは、「個性的な自分であれ」という強迫観念に縛られているという。
 本来「個性的」であるというのは、社会のなか(他者との関係のなか)で自己研鑽し努力することで、「他者との比較において個性的な自分」になっていくものである。しかし今の子どもは、もともと生まれながら「自分は個性的なものを持って生まれて来て、いま自分が個性的でないのは、まだ個性的であるはずの自分の中のダイヤモンドの原石のようなものが発見されていない」と考えている、と分析されている。そして「個性的であるはずの自分を探す旅」は自己の内へ内へと向かっていくことになる。そこに他者は不在なのだ。繰り返すが、本来「個性的な自分」の確認は他者(=社会圏)のなかでされるものだが、今の子どもたちは「閉鎖された自己の内部」でしか検証しようとしない。当然検証できずに、結果いつまでたっても不確かなものとなる。「一人だけの世界では個性もへったくれもない」ということだな。
 そんな子どもは「自分を傷つけない、自分と表面的に合う仲間」(親密圏)との密接な関係をもつことで、個性的な自分を確認できない「不安定な自分」とのバランスをとっているらしい。グループはお互いに傷つけあわない非常に「優しい関係」で結ばされている。お互いに相手のなかに「自己」を見つめ、相手を傷つけることは自分を傷つけるという合わせ鏡のような関係から、相手を傷つけないように「優しい関係」を築くという。そこにある「優しさ」は本来的な相手のことを思いやった気遣いではない。つまり相手のなかにいる自分が傷つかないための優しさであり、「ナルシシズム」なのであるのだ。
 今の子どもたちの、自分の意見を断定しない「〜みたいな」「私的には〜」「っていうか〜」という曖昧な言い方も、親密圏のなかで意見が食い違いを避け、気まづくならないための配慮であり、意見を闘わしてなお絆が強くなるといった本来的な友人関係ではない。自分が選んだ相手は自分の化身であり、その相手が傷つくことは即ち自己が傷つくことになるのだ。『ONLY ONEでありダイヤモンドの原石であるはずの自分が傷つくことは絶対に避けなければならない』という心理だ。
 こうした意識の集団である、外へ向かわない内向的かつ閉鎖的なナルシシズムグループはそのグループ(親密圏)以外の他者はまったく不要の存在となる。よって「オヤジ狩り」などの行為、「電車のなかで車座に座り大声で喋る」行為などは、もともと他者不在(他者という発想がない)という観念なかで行われているので、「オヤジ狩り」でいえば「オヤジは人間」でなく、「電車の車座」でいえば「迷惑を掛ける『他人がいる』」という発想がないのである。はっきり言って、電車のなかで車座で大声で喋ったり、化粧をしたり、着替えをしたりする子どもたちにとって、「まあ、最近の若いやつらは…」と舌打ちをするあなたは存在さえしていないのである。
 というようなことが切々と書かれている。親にとっては必読の書である。
 じゃ、読んでどう子育てをするかが、また問題なのであるが……

「個性」を煽られる子どもたち―親密圏の変容を考える 土井隆義著
「個性」を煽られる子どもたち―親密圏の変容を考える (岩波ブックレット)

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未来を信じ、未来に生きる。
2006/11/08 18:26

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
いい本をご紹介いただき、ありがとうございました。さっそく読んでみます(ブックレットは立ち読みも可能なところが嬉しい。笑)。個性的であれという言葉は、ある意味で本当に酷い。「人と同じじゃあいけないよ」というのは――人の顔色見て、事なかれ主義で横並びを是とする生き方はいけないよという意味ではOKなんですが、「何か目立った特徴のない人間はダメ」みたいに煽られると奇妙なことになる。ちなみに私は、『世界でひとつだけの花』という歌は好きではありません……。
華氏451度
2006/11/08 21:25
いやいや膨大な読書量を誇るだろう華氏さんに「いい本をご紹介」なんて言われると、緊張してしまいます。でも、結構印象に残っている本です。それとワタシにはとても立ち読みで理解できる内容ではありませんでした。
「世界でひとつだけの花」は、よく作業所などの「障害者」関係の催しで歌われるのを複雑な思いで聞いていました。
dr.stonefly
2006/11/08 22:06

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