「全国学力調査への違和感」…調査って何ですか?

 全国で唯一拒否した犬山を除いて全国学力調査が行われ、結果がだされた。
 いろいろと批判したいことはある。調査にかけた77億円という金についても、そも調査の意図と結果の分析、それをどう用いるかの意義についてもはなはだ疑問である。が、専門的な批判は詳しいブログにまかせよう。
 ワタシが言いたいのは、調査の意図や批判ではなく、調査そのものについてだ。
 ワタシには人間自身を調査するということが許せないのだ。

 まだ青カン(ホームレス)支援をしていた頃のことである。
 ワタシがかかわった頃、そこはまだ「支援」という運動だった。支援者が当該=青カンに必要なものを考え、施すという行動だったわけだ。「考えて」と書いたが基本的に何に困っているかなんぞすぐに解る。とりあえず衣食住である。それで「炊き出し」が行われたり、古着などの衣類を集め配られたり、さすがに住を用意するのはなかなか困難だったので替わりといってはみすぼらしいがカイロや毛布を配ったりしていた。
 やがてワタシがいたカイロや茶やビラなどを配ってまわる「夜回り」という活動をするグループは、「支援」という活動に疑問を感じた。青カンの問題は私達のいる社会の問題で、ワタシたちも「当該」であることを確認し合い、青カンと「共闘」するという道を探った。
 もともと「夜回り」なんぞ支援になっているかどうかも解らない活動だったので、「共闘」という道を見出すのも必然だったのかもしれない。「炊き出し」のように青カンを集めて行う支援と違って、こちらから出向いて会いに行く活動だったことも後押ししたかな。
 もちろん「共闘」といってもそうは簡単にはいかない。人間関係ができていないのだから。それで、ワタシたちはまず人間関係をつくっていくことにした。でもこれが困難だったんだな。
 昨今の状況は知らないが、あの頃の青カンのオッサンらは口数が少なかった。話しかけてもチラッと見られるだけか、目を伏せるオッサンも多い。うすら笑いならいいが、声をかけただけで怒り出すオッサンもいる。それも当然だろう。青カンになった人々はそれぞれに辛い過去を背負っている。もちろん今の状況も決して誇れるものではない。プライドもずたぼろ。名まえも過去も思いも語りたくない人が多いのだ。そのうえ世間からの差別、襲撃、etc.etc……、オッサンらにしてみればワタシたちも世間に括られる。こちらが人間関係をつくりたいといっても、それほどおき楽な心境にはならないだろう。
 それでもワタシたちは声をかけ、こつこつと少しづつ人と人との繋がりをつくろうとした。やがて少しずつではあるけど話ができるようになり、「おじさん」やら「先輩」という呼び掛けから「苗字」で呼ぶ様になり、「あだ名」で呼べる人もできてきて、世間話(笑)などをしていた。あだ名で呼び合う様になっても、なかなか自ら過去を語ろうと言う人はいなかった。自慢話はあったが青カンに堕ちて行く過程の話はなかった。もちろん個人的な過去、それも辛いだろうと想像がつくような過去などワタシ達のほうからも積極的に聞けるような話じゃない。それでも関係ができてくるにしたがって、中には自分から話出す人がいたり、いろいろな話をしてるうちに何となく出身やら年齢やら、仕事やらがわかってくる。

 そんなある日、同じ「支援」運動の別のグループから青カンの「調査」の話がだされた。
 どこぞの大学のゼミとともに聞き取り調査をして分析までしてくれるそうだ。
 ワタシたちも行政闘争などをするうえで、何のどんな部分を要求するか、訴えるか、の具体的な数字の把握は必要かなと感じていた矢先である。とりあえず大学の「センセイ」から話を聞く事になる。
 センセイは「やってあげる」という空気を漂わせながら、2ヶ月しか時間がないから協力しろという。
 俺たちがブチキレたのは言うまでもない。
 少なくとも2-3年はかけて関係つくってきたわけだ。しかも質問やら聞き出そうとする関係じゃない。人間同志として共に闘っていこうという関係だ。センセイ方は、お高いところから見下しているという空気を感じた。俺たちの視線は、青カンの高さに近かったのだ。
 それから何回か、そのお高いところにいるセンセイと対峙することになるのだが、ことごとく対立する。理屈じゃないセンセイの言う事が肌感覚で許せないのだ。最後には決裂することになる。結局その「センセイ」をよんできたグループはサンプルの少ない調査をしたのだが、その結果がどう活かされているなんて見えはしなかった。
 ゼミの研究の成果にはなったんかい。支援としての現状の把握はできたのか?
 結局、青カンの境遇は何も変わんなかったじゃねぇか。

 今回の学力調査に対する違和感を感じながら、当時のことを思い出している。
 あの時感じた違和感と同じなのだ。
 あの時、俺たちは、なにが許せなかったのだ。
 突然きた、どこぞのお偉い「センセイ」が高いとこからエラソーに物をいったことなのか?
 何年もかけて作ってきた人間関係を利用されて2か月で聞き出す、ってことか?
 違う。あの時漠然としていた肌感覚がいまなら解る。
 俺たちは、一人ひとりのおっさんを調べられることが許せなかったのだ。
 同志のように感じ出してきた一人ひとりのおっさんを数字で括られてグラフにされることが許せなかったのだ。
 人間として関係のできたオッサンら自身の調査などさせたくはなかったのだ。

 あれから十何年かたった今、全国学力調査が行われた。
 じゃ、子どもならいいのか?
 バカにしてないか?
 偉そうに高い所から子どもを見下して調査かよ!!
 あん、大人ってのはそんなに偉いんか?
 つまんねぇ価値観うえつけるための調査か!?
 大人の都合良く洗脳するための調査か!!
 一人ひとりの子どもを数字で括ってグラフにすることに違和感を感じないのか?
 冗談じゃねえぞ、ふざけんじゃねぇ!! 一体何様なんだ!!
 アホが高みからもの言って何が解るというんだ。
 一人ひとりの子どもは「調査」じゃわかんねぇだろ。
 「調査」のやり方じゃないんだよ。「分析」の仕方じゃない!!
 大切なのは現場で共に学べる人間関係をつくることじゃないのか?
 一人ひとりちがう子どもそれぞれと共に育つことじゃないのかい。
 現場が充実する環境をつくることじゃないか?

 おそらくこの調査でも、大切なことは何も変わらないだろう。
 

この記事へのコメント

非戦
2007年10月27日 10:02
子供の学力テストと青カンの「調査」とむすびつけて考えられたdr.stoneflyさんはすばらしいです。
どちらの調査にも違和感があります。
私は、自分が国語の読解力のテストをされるたびに国語が嫌いになって、読解力をつけるために本を読まなければないという脅迫観念にかられた馬鹿が時期がありました。楽しみのためでない読書ほどつまらないものはありませんでした。その後、読みたくて手当たり次第読み始めてからは、読書の喜びがわいてきて、幸いそのままですが。
とにかく、学力テストで、一定の見かたを強制する危険のある、とくに国語と社会(歴史)のテストは害悪ですね。きっと国は思想統制をねらっているのでしょう。「つくる会」の教科書どおりの解答でないと、不正解になって、得点の低い学校に政治介入してくるんですよ、きっと。
×第二迷信
2007年10月27日 14:08
そもそも、テストを「生かす」つもりなんか、文科省には存在しないでしょう。

それで儲ける人のため。
ただそれだけの理屈で…

直接間接将来的に儲ける人たちに踊らされて、うちの学校は…という親も親だが。
dr.stonefly
2007年10月27日 16:22
非戦さん、ワタシは個々の生徒に戻ってくる生徒のためのテストは生徒が望めば否定はしません。ただ今回のような「調査」というのが許しがたいのです。「調査」が誰の為の調査かといえば、高みかで偉そうにしているやつらのため、と言えるのではないでしょうか。
しかも、×第二迷信の言われるように、偉そうにしているヤツラがやる「調査」の目的は利権のためというのはみえみえですね。ベネッセにしても内田洋行にしても笑いが止まらないでしょう。
ぐーーんと引いて、子どもたちのためとしも、国家が国家のめの教育する調査など糞喰らえです。
愚樵
2007年10月27日 19:29
dr.stoneflyさんのいいたいこと、よく分かる気がします。高みからの「調査」。これは大人が子どもを教え育むこととは似て非なるものです。

昔、大学で文化人類学の講義を取ったことがあるのですが、これに私はそうした「調査」の匂いを感じたことを憶えています。フィールドワークと称して人々の行動を記述する。なんだ、それは? と思いました。人と接して、その思いを綴るのはいい。けれど、ハナから突き放して人間を「調査」とは。相手を未開人と見下しているとしか思えませんでした。

だがしかし、そうした「調査」から得られたモノは「宝」だというのも事実。なんだか悔しいですけど。
「宝」のために「調査」してもいいとは私は思いませんが、でも得られた「宝」は大切にして欲しい。

欲しいけど...、ふう、ため息が出ます。
dr.stonefly
2007年10月28日 07:45
誰かにツッコマれるかな、と思いましたが、本文中で「行政闘争のため具体的な数字は必要かなと感じた」と書きました。「宝」という感覚もわかります。今でも「調査」を否定しきれていない自分がいます。何かを変えたいと考えたとき、現実を知りたいと思うのは、変えたいという思いの欲求で否定できません。ワタシが感じた違和感は「誰が」ということかもしれないと思います。
たとえば、青カンが奪われたものを奪還したいと闘うために「自分たちで自分たちのことを知るため」調査するとか、論理矛盾で現実的ではありませんが、子どもが学習環境向上のために「自分たちで自分たちのことを知るため」調査するのであれば、納得できます。
という意味で純粋な代行者が調査するのは許容しなければならないのかもしれませんが、代行者ということで意図を考えてしまいます。
嫌われ、あくつです
2007年10月28日 20:52
こんばんは。
きっとそれは調査をする以前の問題に怒りがあるからですね。
まともな政策があればもっといい世の中になるはずですし、調査なんて必要ないのですから。
dr.stonefly
2007年10月29日 08:50
あくつさんおはよございます。
そうか、調査が先か、調査の必要の無い社会が先か、という問題ですね。調査が必要でない社会は理想でしかないのかなぁ。哀しいかな「調査不要」というのは「現状」のこの社会にはそぐわないかもしれません。
それならば、せめて対象に対して誠実さを持って欲しいです。
Francisco
2007年11月03日 11:24
dr.stonefly様こんにちは
SAUDADEな日々です。
今一度、忘れてならないのは、何度も指摘されて来た事ですが、「できる地域」つまり「いい大学に合格して将来カネを稼ぐ子」の人数の多い地域から順に教育予算を配分し、ペーパーテストの点の低い地域では減らす、という目的がありそうな事です。
教育格差を徹底的に進めることで、さらに社会格差を広げようという、子供をオトナ社会の所有物としてしか見ない今の政府の方針が見え隠れします。
自由法曹団が出した『「全国学力・学習状況調査」の実施に反対する声明 』が分りやすいです。
http://www.jlaf.jp/jlaf_file/070402gakute.pdf
Francisco
2007年11月03日 11:29
追記です。
後ろで狂言回しをしてるのが「NTTデータ(政府・総務省の天領)」「ベネッセ(公明党・創価系)」ってのが、何よりの証拠でしょうね。
dr.stonefly
2007年11月03日 16:50
Franciscoさん、こんにちは。
できるところに金をかけるというのは、例のエリートだけに金をかければいい、あとの多数は愚直に育てばいいという思想ですね。まったく許しがたい。
しかし、一方でペーパーだけの調査でその目論みがうまくいくと考える政府もアホです。つまりいずれにしても無駄に税金を使うことになる。
実質的な成果はベネッセとNTTデータと一部政治家、官僚の私腹を肥やすというとこですね。
露骨です。見抜けない犬山以外の全都市の罪は重いと言わざる得ませんね。

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