「濁流のなかのホームレス」…なぜ救助を拒否したか?

台風9号はすっかり消え果てたけど、ワタシの中からは去ってくれない。
生で中継された、濁流の多摩川にいたホームレスの画像である。
ヘリコプターでの救助を頑なに拒否していた。
「普通」は救助を求める状況なのに、拒否したのだ。
死ぬかもしれないのに拒否した。
実際に濁流に呑まれた3人は命を落としたのだろう。
そんな危険にも係わらず救出を拒否したのだ。
理由はいろいろ言われている。
家財道具が大切だったから、
一旦離れるとその場所をとられるから、
ネコがいたから、
いずれにしても普通じゃ考えられない。
「普通の社会」の常識では考えられない。

でも、本当の理由はこんなことだろうか?

救出を拒否するホームレスが罵倒される。
世間からは、普通の感情が吐き捨てられる。
「バッカじゃないのぉ~」、
「死にたきゃ、死ねよ」、
「役立たずは死ねばいい」、
「税金がもったいないからヘリ飛ばすなよ」、
「『ゴミ』が一掃されてちょうどいいんじゃないの」。
これが「普通の社会」にある声である。

ふと記憶の断片が甦った。
ずっと昔のことである。
もうどうにもヤバいオッサン(青カン)に出くわした。
地に倒れ、立ち上がることもできない。
話しかけても返事はなく、目も虚ろだった。
放置すれば死ぬだろうと、素人目には感じた。
119をコールし救急搬送を依頼した。
救急車が到着し、いざ救急搬送しようとすると、
「ほっといてほしい」
オッサンはか細い声で拒否したのだ。
この日の救急隊員は年配で珍しく優しい人だった。
「病院へ行こう」と、心からの説得をする。
救急隊員は、いつまでも真剣にオッサンに話しかけた。
でも、この青カンは倒れたまま頑なに拒否したのだ。
ワタシも呼び掛けた。
でも、拒否された。
ワタシにはオッサンが何故拒否するかうっすらと解っていた。
これは、この社会の拒否なのだ、と感じていた。
この社会にいるワタシの拒否なのだ、と……。
あんた達とはもうかかわりたくない、ほっといてくれよ、って言っているのだ。
「もういいから、そっちの社会に連れ戻さないでくれよ」と聞こえた。

そのオッサンは既に一度、「普通の社会」の濁流にのまれて死んでいた。
必死にあがいて、社会の切れ端にしがみつこうとしたが、その手を踏まれた。
そのまま流され、濁った流れに呑まれて死んだんだ。
手を踏みにじられ、濁流に呑まれ死んだオッサンは多い。
そんな一度は殺されたオッサンらが集まってコミュニティを作っていた。
箱がけの村である。
その村のオッサンらはこのうえもなく貧乏だった。
「普通の社会」では考えられないような貧乏だった。
仕事もたまにしかなく、時間はあったが、
みなが喰うに困る生活だった。
でも、助け合って生きていた。
ぎりぎりのところで、物だけでなく、多くを分け合って生きていた。

いつかワタシはそんなオッサンらの村をみていた。
その村をいいなぁと思ってた。
「普通の社会」で捨てられた物で食いつなぎ、
生きている村があってもいいじゃないか、と思った。
最悪の環境のなかでも助け合う村があってもいいと思った。
ただワタシには、「普通の社会」で自殺してその村で暮らすことはできなかった。
それでもその村は、ワタシにとっても存在意義があったのだ。
ただワタシが捨てきれないでいる「普通の社会」はその村の存在を許さなかった。
ワタシのいる「普通の社会」は、村を疎み、破壊していった。
村の存在を許さず、否定した。
ワタシはそんな「普通の社会」が厭になった。
でも、そこから出て行く勇気は未だにない。

多摩川のことは、報道が言っていた理由、
家財道具が理由でなく、場所取りが理由でなく、ネコが理由でなく、
多摩川の青カンは「普通の社会」との関わりを拒否した気がしている。
「普通の社会」が自分たちの村に介入してくることを拒んだ気がしている。
村を疎み、破壊を企てる「普通」を拒否したのだ。
え、救助だって、冗談じゃない。
一旦殺された「普通」に引きづり戻されても、また殺される。
もういいよ、ほっといてくれよ、

「バッカじゃないのぉ~」、
「死にたきゃ、死ねよ」、
「役立たずは死ねばいい」、
「税金がもったいないからヘリ飛ばすなよ」、
「『ゴミ』が一掃されてちょうどいいんじゃないの」。

なんとでも言えよ。
もうお前らのいる「普通」には愛想つかしたんだから……、
あの濁流のなかのオッサンたちをみながら、
そう、言っているように聞こえた。




これは「普通」を捨てられないワタシの妄想なのだろうか?
オッサンらにも解らないかもしれない。


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この記事へのコメント

すぺーすのいど
2007年09月10日 22:39
う~ん・・・深いですねぇ・・・
私もおそらく「普通」の世界にいる人で、此処の全てを気に入っているわけじゃないけど、此処を抜け出す勇気?は今のところない・・・ってのは確かですねぇ。
う~ん・・・深いですねぇ・・・
非戦
2007年09月11日 09:08
濁流の中で救助を拒否したホームレスの人の話、dr.stoneflyさんもかかわった倒れたホームレスの人が、救急車を拒否した話、どちらにも驚きました。そのホームレスの人たちの気もちがどういうものだったかを推察されてdr.stoneflyさんが書かれたこと、深く重いですね。
徳山ダムの人人を描いた「水になった村」という映画を見てきましたが、そこでは、移転した先から、徳山のダムに水が入るまで徳山に通い続けて生活する、生き生きとしたお年寄りたちの姿が描かれています。で
もいよいよ故郷を捨てて街に住まなければならなくなったお年寄りは、連れ合いを亡くされたり、新しい家は仮の家だとしか思えないと言われたり、みんな幸せになっているとは思えないのですね。やはり故郷や家に対するあきらめられない気もちが強くて、心と身体が引き裂かれた感じ。
ホームレスの人は、普通の社会を拒絶して、自分の「村」に安らぎを信頼を求めるしかなかったのかしらと思いました。冷たい社会なんですよね。
>村を疎み、破壊を企てる「普通」を拒否したのだ。
きっとそうですね。

dr.stonefly
2007年09月11日 16:38
すぺーすのいど会長、「深い」と読んでいただけましたか。
たぶんこれを読んでいただいても読者によって感じるとこはいろいろだと思います。それこそ、「ホームレスの方が社会を見限っているなんて、バカじゃないの」と思われる方もいるでしょうね。
「深い」と読んでいただいた会長が、何が「深い」かを考え出すと「深み」にはまり底なし沼状態になりますから気をつけて下さい。と泥のなかから叫んでみます(爆)
dr.stonefly
2007年09月11日 16:38
非戦さん、こんにちは。
徳山ダムは結局いちどもいくことができませんでした。
そこから追い出された人々の思いも想像だにできません。
ただ、故郷や家ではなく、社会そのものからオミットされた人間が辿り着いたものとは多少ちがうかもしれませんね。

>自分の「村」に安らぎを信頼を求めるしかなかったのかしらと思いました。
よくわからないのですが、「求めるしかなかった」のかどうかは解りません。
ワタシはなんとなくなんですが、「普通」から解放されたことで、本当に生きることができているのかもしれない、と思っています。
そして「普通」から解放されるのは、どんな状況でもできるとも思ってます。
gegenga
2007年09月11日 21:50
あのニュース映像を見て。
実はもっとたくさんの人が流されているんじゃないか、と思ってしまいました。
静かに、誰にも気づかれずに。
もともと存在しなかったかのように。

「社会」って、なんなんでしょうね?
なのなの勢力
2007年09月12日 02:15
「普通」になっていることに共感します。「普通」って、普通じゃないんですよ。普通じゃないものが「普通」と呼ばれているのが「普通の社会」なんです。現実を「普通」と呼んではいけないのです。現実がおかしければ、おかしいと言わねばなりません。おかしいのは、普通じゃないのです。(我ながら難解ですいません)
dr.stonefly
2007年09月12日 09:08
gege師匠おはようございます。
多くの人が流されている……、そうかもしれませんね。どこに辿り着くんでしょうね。

社会にしがみついているワタシも、どこに辿り着くのだろう?
dr.stonefly
2007年09月12日 09:12
なのなの勢力さん、コメントありがとう。
自分の書いたものを読みなおして「普通」ってのは、マジョリティということかな、とふと思ってしまいました。マジョリティが「善」とは限らない。マジョリティが判断基準にはならない。むしろマジョリティが「善」を殺すかもしれない。
「普通」=「善」であれば、共感したいのですが……。
BLOG BLUES
2007年09月12日 12:33
こんにちは。いいエントリーですね。♪~川は流れてどこどこ行くの 人も流れてどこどこ行くの そんな流れが着くころには 花として花として 咲かせてあげたい~抗菌無臭のデオドラント市民社会じゃ、人は花と咲くことはないだろう。どんなにキレイでも造花だ。混沌猥雑な庶民の間にこそ、美しいのや毒を持ったのや、いろんな花が咲き誇るのだと思います。
嫌われ、あくつ
2007年09月12日 12:52
折り合いをつけて生きていくには、あまりに難しい。それほどの社会になっていますね。人間らしく生きたい。きっと、彼らも私たちも同じなのだと思います。
dr.stonefly
2007年09月13日 08:26
bluesの兄貴、おはようございます。
昨日は兄貴のコメントに酔っていたら、どこぞの坊やが自爆テロを決行して気分が害されました。
今朝、浸りなおしてます。
混沌猥雑を忌み嫌うデオドラント市民が「普通」となっている今、青カンの「花」は孤高の美さえ感じられます。
そうそう「みんな個性をもったそれぞれの花」なんて薄っぺらな言い回しの花じゃなくて、ワタシも「普通」から流され、流れ着くところに咲くことができたらと思いを馳せている。
dr.stonefly
2007年09月13日 08:30
あくつさん、だから、嫌われていませんってぇ(笑)
折り合いかぁ~、ワタシは折り合いをつけて「普通」にいるのかなぁ~? このブログでは、折り合いがつけれなくて、時にキレたりするのかなぁ。
「人間らしい」ってなんだろう? はたして誰が人間らしいんだろう?
ワタシは本当に何にも解ってないヒヨッコです。
嫌われ、あくつ
2007年09月13日 12:41
変なこと書いてごめんなさい。
はっきりこう書けばよかったですね。
「教科書に載せたい文章です!」
dr.stoneflyさんの文章は、いつもしみじみと考えさせられます。
kuroneko
2007年09月24日 23:56
きょう、夕方のニュース特集で(日テレ系かな)、多摩川のホームレスのその後をやっていました。猫も戻ってきたそうです。かわいかった。
dr.stonefly
2007年09月25日 21:50
kuroneko兄さん、そうですか、戻りましたか。
……
……
……あとにつづく感想を書くのが困難だなぁ

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