「白バラの祈り」…過去のドイツなの?今のニポンなの?

 ゾフィー・ショルは、ナチスドイツのヒトラーを批判し「ビラ」をまいた。ただビラをまいただけ。ハンス・ショルはビラ以外にも壁にヒトラーを批判する「落書き」を書いた。ただそれだけのこと。されど、それが「生きる」ということなのだろうか?
 今はヒトラーの救い様のない勘違いと残虐性を批判し、またそれに加担することの反省は多くの人ができている、と信じたい。しかし映画のなかの世界では多数が「洗脳」されていた。「洗脳」されていた国民のなかでは、ただ批判のビラをまくこと、ただ批判の落書きを書く事さえ命がけだった。いや、いつの時代、いつの場所でも「洗脳」された人々が多数であれば逆らうことが非常に危険な行為になる。それが体制であれば救われないわけだ。

 この映画は二つのことをワタシに問いかける。

 一つはこの映画が過去のドイツのことを描きながら、近未来のニポンを予感させるということ。
 ゾフィー・ショルたちは戦争に反対し虐殺に反対する態度表明を貫き逮捕された。ヒトラーに媚びて検事になった男は、「国家に大学へいかせてもらっている恩も忘れて裏切るとはけしからん」と怒り、裁判では元共産党から転向した裁判官が感情的に激怒しまくり死刑を宣告した。そして即日、死刑執行がされた。
 これはナチスドイツの頃のことであり、人間として間違った悲惨な過去の出来事である。またそれが多数の認識だよな、と敢えて確認しなければならないのだろうか。というのも、この映画が、はたして本当に過去のナチスドイツのことと言えるのかどうかが結構不安なのである。
 ビラを配って逮捕、落書きして逮捕、というのはつい最近のニポンでもあったことだ。映画のなかで街中に掛けられる赤地に白の丸のなかに描かれた鈎十字の旗。また挨拶である「ハイル、ヒトラー!!」は、日の丸、君が代の強制を連想させる。さらに映画で検事がいう「国家に大学へいかせてもらっている恩も忘れて裏切るとはけしからん」という台詞は、以前のエントリー「じゃ、日本をでていけば~」…と言ふお方のメンタリティで取り上げた「あなたたちの言ってることおかしいよ? 日本人としての恩恵を受けていながら、日本を 否定しているんだから。」という愛国少年のコメントを思い出す。また、ただひたすら感情的に怒りまくる裁判長はまるでアベ壷のようではないか。さらには愛国心を教育によって植え付けようとする姿勢。国民を統制する数々の法案の強行採決……。そして共謀罪……
 この映画が描くのは情景は、近い将来のニポンを予言してはないか?

 この映画の二つ目の問いかけは、やはり重い。
 ここのとこのウダウダとしたエントリーで、ちょっと自分でもしんどくて厭になりかけてきたテーマである。せめてこのブログのなかではうやむやにして誤摩化し、以前のようにギャグとネタ、笑い満載のエントリーをメインにしようと、と思っていたのに、この映画を観てまた問いかけられてしまった。正直言ってきつい。
 逮捕されたゾフィは信念を通した。信念を通せば殺されることも十分知っていたはずである。それでも己の良心、正義を誤摩化すことなく通したのだよな。

 つまり、自分がゾフィだったらどうする? ということだ。
 証言しなければ、パクられると脅されたらどうする?
 認めれば、罪を軽くしてやるといわれたらどうする?
 辺野古で直接行動している人間がいることを知ってどうする?
 ヘタレていたいが、本当に目をつぶることができるのか?
 自分を誤摩化して生きるか、善(映画では良心)を通して死ぬか?

 正直に告白しよう。ワタシはいつも自分を誤摩化し生きてきた。いや言葉が悪いかな、自分が傷つかないようにいきてきたわけだ。ヘタレだよね。ヘタレで悪いのか?いいではないか、と自問自答する。そして自分なりにいろいろ言い訳をする。
 いわく間違ったヤツラの間違った土俵で良心を主張して殺されることに意味があるのか?
 生きていての物種、死んでしまえばそれで終わりだよな? などなど。

 あぁあ、なんだかキツいよな。21歳のゾフィにこれでもか、というほど見せられちまって。

 過去、ナチスドイツという洗脳の渦中でゾフィは信念を貫き通した。こんな行動が出来るか否か? するか否か? ああ、想像するだけでおぞましい。悲しいかな、くじける自分が見えるな。鬱。……でも、まだ間に合うかもしれない。
 ニポンで生きて行くワタシが「究極の選択」をしなければならい、という状況になる前に……、多分、即、殺されることがないだろう今はヘタレている場合じゃないかな。


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この記事へのコメント

一日本人
2007年05月01日 21:40
ニポンという書き方、非常に軽薄な印象なんですが。
dr.stonefly
2007年05月02日 03:56
国家という共同幻想に「重きをおく」ことへの批判を込めてますので、「非常に軽薄な印象」という感じ方は、正解です。ちゃんと伝わり感謝です。
非戦
2007年05月02日 20:39
日本も治安維持法で、たくさん人がつかまり、拷問などで獄死しました。警察に捕まったそれらの人が、悪いわけではなりません。ニポン政府が、反戦を口にしたり、書いたりしただけの人たちをも殺したのです。そういう国家権力に対しては、日本ではなく、ニポンのほうが適切だと私も思います。
一日本人
2007年05月14日 23:32
こんなコメントに返事がいただけるとは思っていなかったのでしばらく見ておりませんでした。申し訳ありません。意図するところはよく分かりましたが、私としては「ニポン」などという国は知らないのでそこで何が起こっていようとどうでもよいと言うことになりそうです。
dr.stonefly
2007年05月15日 16:43
一日本人様
こちらこそ、挑発的なコメントにお返事をいただけるとは思ってませんでした。しかも丁寧はお返事を頂けて恐縮です。一日本人さんが、所謂ネトウヨのような投げ捨てコメントをする方でないと見込んで、お聞きしたいのですがよろしいでしょうか?
あなたは、ワタシが「ニポン」と表記したことで、「そこで何が起こっていようとどうでもよいと言うことになりそうです」という風に思われるのですか?
例えば、ワタシが「日本」と表記すれば「そこで起きることを真剣に考える」ということですか? 
上でワタシがコメントしたことは厳としてワタシのなかにはありますが、表記によって、あなたと「共に考えること」が妨げられるならば、ワタシは今後表記を改めたいと思います。「本質」を一人でも多くの方と追求しなければならない今、ワタシは表記にはこだわりません。
再来訪されたら是非教えてください。
一日本人
2007年05月16日 22:52
「日本」という国名はこの国の人たちに古来より使われて共通認識されるようになったものであって、国家によって押しつけられたものではないでしょう。国政、国体等について批判的な考え方があるのは理解出来ますし、議論されるべきだとも思います。しかし、そのような議論はあくまで「日本」という国を良くしようという目的のためにするのでは?そのような話をするときに、対象である「日本」を茶化して(dr.stoneflyさんはそう思っていないのかもしれませんが)表記されたのでは、「日本」のことを小馬鹿にされている感じが先に立ち、内容を真剣に検討する気持ちにはなれません。私だけが変わり者でこのように感じているとお考えであれば、dr.stoneflyさんにとって問題はないですから、表記を変える必要はないと思います。ブログという媒体は結局のところ書き手が主役ですから。
ところで、最初に頂いたコメントで「国家という共同幻想に「重きをおく」ことへの批判」と書かれていますが、あなたはアナキズムを信奉する方なのでしょうか。もしそうならば、残念ながら私とは思想の根本が異なりますので、これ以上は時間の無駄かと思います。
dr.stonefly
2007年05月17日 09:18
 ひとつ大きな相違は、国家に対する感覚かもしれません。長くなるので書けませんが、池田晶子がいうところの「国家など共同幻想」というのがワタシには非常にすっきりおちてきます。
 ワタシは本来アナーキー(に極めて近い形態)でいいと思ってます。ただし全ての人間が「善」であることを前提にしてです。ありえませんよね。つまりアナキズムはあり得ないということになってしまいます。ただ、やはりワタシは夢想家であり「イマジン」を目指せばいいと思ってます。そこに国家という線引きは存在しないでしょう。また国家をはじめてとして「線引き」で区切らなければならないことに違和感を覚えてます。2007/1/3あたりの「差別と国家」を読んでいただければ詳しく書いてあります。
dr.stonefly
2007年05月17日 09:18
 正直にいいますと「国家に固執」することに対し「小馬鹿」にしたいという感覚がワタシのなかにあるのかもしれません。ただ、ワタシは今回以降、一日本人さんのように「日本」にこだわりを持つ方にも読んで頂きたいため、今後は「日本」と表記します。(ただ、ニポンと書いていなければ一日本人さんと会話できたか、どうかも疑問ですが(笑)……、すみません。)生意気な書き方になって申し訳ありません。
 ところで、唐突ですが、九条についてどうお考えですか?
一日本人
2007年05月17日 23:42
九条についてどう考えるかと、随分重い話題を軽く振ってくれますね(苦笑)
私は嘘、屁理屈、詭弁が嫌いです。憲法九条を読んで自衛隊の存在を合憲と考える人は日本語を母国語とする人間とは言えないでしょう。では、私が自衛隊を即解散すべきと考えているのかと言えばそうではありません。私は現実問題として自衛権を否定することは出来ないし、そのための戦力の保持は必要であると考えています。よって、九条の改正...というと揚げ足取られそうなので(dr.stoneflyさんが取るとは思っていません。しかしこういう揚げ足取りが多く見られ、議論を停滞させていると思いませんか?)九条の「変更」を支持します。dr.stoneflyさんは2006/07/15のエントリーで侵略されて殺されてもしかたがないと言われていますが、私はそこまで達観できません。自分が襲われたときは当然、家族が殺されそうになればどんな手段を使っても(相手を殺しても)守ろうとするでしょう。
ちなみに、上記エントリーで言われていることは池田晶子さんの言葉を引用されているようですが彼女の思想はちょっと違うのではないでしょうか?
dr.stonefly
2007年05月18日 05:11
重い話題を軽く振ってすみません。
9条と現状(自衛隊)の矛盾について、言われることは解ります。その上でワタシは自衛隊(災害救助を除いて)もいらないと思っていることは、過去の記事まで読んでいただき解って頂けたと思います。
その記事では「誰かを殺すぐらいなら殺される方がましだ」と書きましたが、達観というよりは痩せ我慢、殺される場面を想像して震えているのが現実です。現実にならないための努力が必要で、そこに力を注ぐべきだと思ってます。どうも日本は平和であろうとする努力が足らないような気がしてます。
dr.stonefly
2007年05月18日 05:12
突然9条にかんし聞いてみたのは、今「改憲(特に9条変更)を望むメンタリティ」について書いているので、助けて欲しかったのです。理由が「銭」じゃない方と対話しなければならないと思っていました。やはりおそらく「国家観」が問題になってくる気がしますが、もうすこし思索を深めなければ書けそうにもないです。
すみません。今、自衛隊が自国民(そのなかには知人もいます)に刃をむけるかどうかが、気になって思索の余裕がありません。お聞きしたいことも多く、池田晶子の話しもしてみたいのですが、ほんとうに気持ちの余裕がもてません。
呼びかけておいて勝手なんですが余裕がない今ではなく、よろしければ、後日じっくりとお話させていただけると嬉しいです。
genj
2007年09月26日 09:44
はじめまして。劇団民藝の酒井と申します。
来月、「白バラの祈り」の舞台版を上演致します。
もしご興味ありましたら、ぜひお出かけ下さい。

http://blog.butai-butai.com/archives/51052653.html

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