「名古屋ホームレス追悼集会」…路上の死からの問い

 2006年8月14日、名古屋都市高速高架の下のゲートボール場に行った。昼間は在宅のお年寄りがゲートボールを楽しむ都市の公園だが、その夜は家もなく路上で死んだホームレスの「追悼集会」が行われた。ながい間、支援/共闘運動の現場を離れていると忘れがちになるが、集会に参加すると「路上」で死んだ、いや社会に殺された「人間」が当たり前のように存在することをあらためて知る。日も暮れた会場には多くのホームレスが訪れ、仲間の死を追悼する。またそんなホームレスを支援し共闘する市民も多く訪れた。もちろん靖国なんかとちがい「政治家」なんかはいやしない。なんの得にもならないホームレスの追悼集会なんぞにくるはずがない。きっとここに居たって売名行為にもならないだろう。誰かのいう「心」なんてそんなものだ。
 そんなことを考えていると、支援団体である笹島診療所によって、亡くなられたホームレスの死に至る状況が読み上げられる。

○11月14日 北海道出身 57才 H公園で亡くなられていました。
○12月3日 出身地も名前も不明 60才前後 A公園から救急搬送後、病院でなくなられました。
○12月15日 Aさん T公園で亡くなられました。AさんはBさんという方の世話をしながら一緒に暮らしてましたが、
○12月16日 Bさん T公園で凍死されました。Aさんが亡くなられたとき、Bさんには入院を強く勧めましたが、固辞された翌日のことです。
○12月15日 東京出身 65才 居宅保護されたアパートで亡くなられていました。
○12月   富山出身  アパートから救急搬送された病院で亡くなられました。
○1月6日 58才 都市高速の下で亡くなられていました。
○1月18日 近鉄の高架下 警備員がみつけたが既に亡くなられていました。
○4月1日  65才 シェルター(ホームレスの為にと行政が建てた臨時宿泊場所)の横で倒れているのを見つけられた時は少し声があったのだが…。
○4月25日 愛知出身 45才 セントラルパークのトイレから運びだされたが、…
○5月2日  タクシーの運転手だったが、夫婦でホームレスになる。はぐれた夫を探していたが、亡くなられていた。(奥さんは居宅保護)
○6月2日  結核で入院した先で亡くなる。
○6月22日 豊橋の病院で亡くなられた。1977年国鉄から夜間締め出しになったときに、一緒に闘争した。
  …
  …

 (車の騒音等がうるさく聞き取りにくくて、聞き取れなかった部分、また聞き間違えている部分があるかもしれない)

 診療所で把握しているのは16名だが、実際にはもっと多いだろう。昨年と違い死に際で病院に担ぎ込まれた情報を得られにくいらしい。個人情報保護法なんかが影響しているのだろうか。

 それにしても寿命をまっとうするには若いホームレスの死である。事故という報告はなかったから、衰弱による病死がほとんだだろう。若くして死んだホームレスのそれぞれの「死」が無念だったのか、悔しかったのか、それとも満足だったのか、ワタシにはわからない。ワタシどころか誰にも解らないと思う。解らない「死」を聞き、悔しいとか怒りを覚えるとかは、ワタシには言えない。しかしだ、ワタシたちが生きて生活している街の公園や路上で、死んでいる「人間」がいるという事実は、事実としてあるのだ。たまたまの一人や二人ではない、この街だけで年間何十人も、全国ではその何倍もいるのだ。この事実は覚えておかなければならない。その死はけっして他人事ではないのではないか。

 ホームレスはその死を迎える前に、社会の制度や経済のシステムによって路上に投げ出された。さらにその路上や公園からも追い出された。テレビでみる外国のリアリティのない「難民」は気の毒であるけれど、周りにいる現実味がプンプンする日本の「難民」は地域住民/市民にとっても追い出しの対象でしかない。行政は「いのち」よりも公園の適性利用をさけび追い出し、地域住民/市民は「いのち」よりも見た目が悪いといい追い出す。では、追い出されたホームレスはどうなるかと言えば、追い出され移動した先でもまた同じように追い出される。ホームレスは「存在」することさえ許されないのである。報告中にでてきた行政の「シェルター」も「可視」である公園から追い出すにあたり、ホームレスを仮「不可視」にする「目隠し」でしかない。

 さあ、この一年で目障りで仕方ない16名(実際にはもっともっと多く)の「存在」がなくなった。毎年、何人も死ぬ事で望み通りの「不可視」になる。目障りだと追い出した行政、地域住民/市民の諸君、どうだいこれで満足かい?

 ところがである。以前からある「格差社会」もコイズミのはちゃめちゃで、これからはさらに酷いことになるだろう。「ワーキングプア」にしても「偽装請負」にしても「地方切捨」にしても、路上に投げ出される人はこれからさらに増えていくと想像される。なんといっても「格差社会」を増長し、食べていけない貧困層をつくり、さらに貧民切捨てがよしとされる社会に変貌したのだから。
 これからは、またホームレスが「可視」として表れるだろう。いままでと比べようがないほどの規模のホームレスが街に溢れる。そうなったとき行政や市民は、また追い出しにより「不可視」にするための努力をするのだろうか? その努力が「死」に繋がり本当の「不可視」になることをよしとするのだろうか?
 自分達が殺人の一端をにぎっているとは思わないのだろうか?

 今年もまた路上や公園で「人間」が死んだ。人知れず殺されていった。
 死んだ者は何も言わない。それに甘んじて殺していることを無自覚に生活していていいのだろうか? 
 なにかを問われている気がする。


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この記事へのコメント

sendo
2006年08月21日 03:53
胸が痛みます。
人の命に関する感覚が麻痺しているのかもしれません。
国の為に死ねば神になり、無力で運のない人々は切り捨てられる命なのですね。
都庁の入り口の前にも何十人ものホームレスの人達が暮らしております。
毎日目の当たりにしている筈の役人や、議員は何も感じないのでしょうか。
石原都知事は、オリンピックに出す予算があるならば、ホームレスの人達が社会復帰できる為にも予算をもっと出して欲しいものです。
dr.stonefly
2006年08月21日 10:23
こんにちは、コメントを読み気がついたのですが、青カンのための予算などまったく期待できないでしょう。それどころか、東京にオリンピックが決まれば、石原は「都内『見た目』浄化キャンペーン」を展開し、青カンの追い出し、抹殺をはかることになると思います。
下等遊民
2006年09月03日 10:05
加藤紘一邸放火事件により、目下、右翼テロが世間の耳目を集めていますが、ひと頃、頻発した山谷争議団に対する皇誠会の右翼テロのような事件は最近どうなんでしょうか? 政治家に対するテロと違って、こうした事件はあまりマス・メディアも取り上げることがないため、何か情報がありましたら是非御教示頂きたく思います。
dr.stonefly
2006年09月03日 13:42
対「金町一家」戦ですね。
90年代前半のワタシが関わり初めたころから大きな戦争はなかったような気がします。(ただ、関わり始めてたころは右も左もわからず知らなかっただけかもしれません、また、ここ数年は現場から離れていて情報があまり入ってきません)。
ワタシが現場にいたころの追悼集会では、笹日労によって、かならず確認されていた、「佐藤監督、山岡同志の意志を引き継ぐ!!」というアッピールが今年は聞かれませんでした。語られなかったことを集会が終わってO委員長にきいてみると、口ごもっていたので問題のベクトルが変わってきたのかもしれません。
dr.stonefly
2006年09月03日 13:42
って、今回、下等遊民さんからコメントを頂いて検索してみたら、今年の1月に山谷労働会館にガサが入ってるじゃないですか!!  しかも小田原さんが声明をだしている。http://www.labornetjp.org/news/2006/1138339916484staff01/newsitem_view
現状、こんな情報も入ってこないほど、現場から離れています。ワタシが、なにかをご教示できる状況ではありません。恥ずかしい思いでいっぱいです。申し訳ありません。なかなか現場へいけずにいますが、何かを聞いたらその都度upすることにします。
下等遊民
2006年09月03日 20:52
早速の御返答ありがとうございました。小田原紀雄氏の声明、興味深く読ませて頂きました。ガサ入れの口実となった集会のスローガンから推察すると金町一家と争議団の闘いは今なお続いているようですね。それにしても教会に警察がガサ入れとは、常軌を逸した事件だと思うのですが、なぜマス・メディアはこういう問題を取り上げようとしないんでしょうね。では今後ともよろしくお願い致します。

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