「ヴェロニカ・ゲリン」 彼女は死んで……

 ふぅ~、溜め息と涙が漏れるな。
 1980年代アイルランドのある街が舞台である。道にはポンプ(コカイン用注射器)が散乱し、修学前らしい子どもが、そのポンプで遊ぶ。街路に停められた車の脇に立つ売人(麻薬小売人)には少年少女が群がり、ボロアパートが阿片窟。
 社会正義のために使命を果たそうとしたのが、ジャーナリストであるヴェロニカなのだ。彼女は、5歳くらいの男の子の母でもある。麻薬中毒の子どもの取材から始まって、小売人、元締めにまで取材を試みる。記事にされると困る麻薬組織(の中の個人)から2度拳銃で撃たれ、1度はボコにされた(叩きのめされた)。3度目に撃たれたとき、殺されることになる。
 ジャーナリストとしての彼女の取材ミスも描かれていてリアルである。またエセジャーナリストである「御用ジャーナリスト」集団がでかい顔をしていることも、いずこも同じ構図だなと想像する。
 彼女のジャーナリストとして取材のやり方に問題があるとか、己の危機管理がまるでなされていないなどの批判はあるだろう。しかし彼女は信念をもって行動したのだ。その事実は感動ものである。(もちろん他人事だからの感動であって、自分の事であれば感動どころではない)。
 映画としての感動は「彼女の死後」、民衆は立ち上がり、法は改正されて、犯人は及び犯罪者は逮捕され、麻薬犯罪が多少減り、と社会が変わっていくところにある。
 しかし、何故「彼女の死によって」なのだ? 何故「彼女は死ななければならなかったのか?」「彼女が死ななければ変わらない社会なのか?」「彼女の死は民衆にも責任があるのではないか?」とつぎつぎに疑問が沸いてくる。
 彼女は1児の母なのである。同じくらいの子をもつ親としてはさらに複雑だ。
 全てが、彼女は死んでひとりの子どもの「母」がいなくなった事実の代償にはならない。

(2003年/米 監督/ジョエル・シューマカー 出演/ケイト・ブランシェット コリン・ファレル)

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