「保育所をめぐる状況と課題」 奈良女子大学 中山徹 2004.9

 ちょと昔の講演だが、今でも荀だと思うのでupしときます。
 2004~2005が保育行政の転換期であることは、子をもつ親の義務としては把握しておきたい。
 把握すべき国(行政)の方針の大きなポイントは「保育園は公の手から離なし、企業にまかせる」ということである。児童福祉法の精神から明らかに反逆する方向転換をなぜすすめるのか? 金がないからである。いやいや、そこに金を使いたくないからである。幼保一元化も保育予算の一般財源化もその布石である。それでは保育の企業化は、具体的にどのように進められるかを予想しよう。国の描く図式である。
当分は「保育園」「幼稚園」「総合施設(仮称)」の3本だてでいきます。
「総合施設(仮称)」とは幼稚園と保育園を併せた性質をもつものです(幼保一元化)。つまり時間や休日は保育園にあわせますが「保育に欠ける」子どもでなくても入園できます。
「総合施設(仮称)」は(営利)企業に経営させます。
じょじょに「公立保育園」をつぶし「総合施設(仮称)」に移行させます。
補助金もカットしていきます。(一般財源化)
幼稚園に対しては規制を緩和します。園児の欲しい幼稚園は総合施設化していきます。
幼稚園の中で「お受験幼稚園」のような特化されたものは、独自の道を歩みます。
さて残された私立保育園だが、道は3つだ。
企業のような経営をおこなう。
補助金がなくなった分、親から保育料をいただく。
保育園事業から撤退する。
どのみち私立保育園は自然淘汰されます。
「お受験幼稚園」と「総合施設(仮称)」だけになります。
 さてここで、8.企業のような経営とは、どのような経営かを考察する。企業とは皆様よくご存知の育児産業に携わるある意味優秀な伸びをみせている企業である。2年ほど前に東京は三鷹市が保育園運営の年間軽費の見積もりを出させてた。それによると
 公立保育園 1億8000万円  私立保育園 1億2000万円   企業保育園 7800万円
 だったそうだ。
 この企業保育園とはいわゆる「ベビーホテル」というのとは違い「ちゃんとしたハード」を有した保育園だ。つまり園舎の大きさ、園庭の広さ、保育士の数は当然既存の公立、私立保育園と同じでの見積もり価格だな。実は既にモデルケースとして存在する企業保育園を視察した人がいて、その人の話だと部屋の壁とかもきれいで、冷暖房も完備されていて、絵本もセロテープで補修されているものなんぞなかったそうだ。しかも近所の評判はすこぶるいい。そいでもって予算がかかってない。すごーい、企業ばんざーい、めでたし、めでたしちゃんちゃん。などと喜んでいる場合ではない。
 ♪「園のからくり、夢芝居」♪ってな感じで安価にできる「からくり」はちゃんとあるのだ。なぜそれほど安くできるのか、それは人件費を押さえる、それが全てである。保育園の予算の大部分が人件費だということである。まずその企業保育園には正規社員がひとりもいない。園長は1年契約の契約社員であとはすべて時給で働くパート保育士。あとは、この企業の保育園部長との会話。 
「部長、よく儲かってますね」
「そらそうさ、うち人件費なんぞかかってへんもん。ん、なに、保育士?ありゃ。みんなバイトやねん」
「部長さん、バイトって、そんなんで保育できるんですか?親とかの目もあるだろうし」
「なにゆーてまんねん、あんた。うち専門家につくらせたマニュアルがあんねん。そのマニュアルの通りやってたら経験なんぞ関係あらへん。今日から保育士になったもんも、20年経験があるもんも一緒やねん、誰でもできるねん。マクドのバイトと一緒や。いらっしゃいませー、今日は何にいたしますか?お飲物は?ってなもんや」
「しかし、そうはいってもね……ほら、子どもって個人差とか…その日その日の気分とか…」
「そやからゆーたやろ、専門家につくらせたマニュアルがあるゆーて。そんなもん中途半端な経験よりよっぽどいい保育ができまっせ。専門家がきっちりアベレージを考えてつくったマニュアルやさかいな。しかもあとうちのマーケティング部門の意見も入ってるしな…、お、しまった、これ聞かんかったことにしてーな」
「なんですか、マーケティングの専門家ってのは、他言しませんから教えてくださいよ」
「ここだけの話やで、絶対ほかでゆーたらあかんで。小声で喋るさかいに、もっとちこー寄りなはれ。つまりな、うちの保育園にくるのはガキだけど、決めんのは親やねん。ええか、これもマニュアル化されているんやけどな、勝負は朝夕の5分づつ計10分やで。明るく元気ににこやかに挨拶はあたりまえ。お迎えのときには、ガキの身なりを整えて、その日そのガキにあったことを一つだけ話すねん。いいか、時間がもったいないから一つだけやぞ。悪い事はいわんでいい、良い事だけ言うねん。しかも毎日違うことをやで。何もなかったら創作でもええねん。そうすると親は自分の子はしっかり見てもらってると思うやろ、ほんで『あの保育園はしっかりやっててくれるから安心よね』と感じ近所で言いよんねん。いわゆる口コミってやつやね。宣伝効果抜群や。ええか、客はガキちゃうで、親やねん。そこをきっちり抑えとかなあかん。それにうちは延長やろが、夜間やろがすべて親のニーズには応えるで、、、すべて儲けるチャンスやしな……」
「でもニーズ全てに応えたら、軽費もかかるでしょ」
「せやから人件費が問題なわけやろ、公立保育園もなくなり、私立も潰れてるいま、保育士なんぞ掃いて捨てるほどおんねん。使い潰しても、文句ゆうやつ辞めさせてもなんぼでも替わりはいるわけや。なんといっても、うちはマニュアル通りやってくれればいいわけやし、誰でもできるお気楽な仕事やさかいな。ガハハハハ」
 とまあこんな会話になる。子ども置き去りの保育である。そこにどんな風景がひろがるのか想像してほしい。(もちろん大阪弁に意図はない。)
 さらに浅井さんは、アメリカへ企業保育園の視察へいったときの話しをした。それはそれは手厚い保育がなされていたようだ。しかしそれは、それなりの…月に20万ほどの保育料が払える人が行ける保育園の話しである。月に10万払える人は10万分の、5万の人は5万分の、全く払えない人のために公立の保育園が少しだけ残してあるらしい。つまり保育の質も金次第ということだな。根本的にそれでいいのかという問掛けである。映画「ジョンQ」の話しを引き合いに出し、アメリカの健康保険制度を引き合いに出し対比させる。つまり手術を受ける事ができるかできない、生き続けることができるかできないかも、金次第で決まる。金が出せない奴は諦めて死んで下さい、という訳だ。保育園と病院では話しが違うという人もでてくるかもしれない。が、公的に保障しなければならない「基本的人権」という観点では何も変わらないのである。今日本もアメリカの悪しき制度に追従しようとしているので、なんとか食い止めなければならない。
子育て支援システムと保育所・幼稚園・学童保育 中山徹著

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