毒多の戯れ言

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zoom RSS 「風のなかの棺桶」…あばよHMちゃん

<<   作成日時 : 2009/02/14 15:25   >>

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 寝ているあいだに携帯が受信していたようだ。
 着歴はAチャン。珍しいな。
 朝、気づき、こんどは誰かな?と思いながら折り返しの電話をする。
 やっぱり、、、ですか。
 こんどは誰かな? は、独り言のうえに冗談だったのに。
 悪い予感は当たる。
 死んだのはHMちゃんだった。
 体調を崩し入院をした後、突然逝っちまったらしい。
 HMちゃんはオイラがまだ市民運動をしていて、一番勢力的に動いていた頃、共に行動していた青カン労働者。嫁さんのTKちゃんとネコと都市高速の高架下に箱ガケして暮らしていた。やっぱ、当該であるHMちゃんなんかが夜回りをしてオレたちはHMちゃんたちの支援になりたいよな、なんて話をしながら、共に夜回りやソフトボール大会をやりつつ、HMちゃんは周囲の青カン労働者との仲間づくりをしていた。豪気な兄貴分だった。嫁はんのTKちゃんも人懐っこい性格でよく話をしていたな。
 オレが運動から離れた後、TKちゃんが死んだと聞いた。HMちゃんも随分、気落ちした様子だったと聞いたが、それでも今に至るまでずっと夜回りをしていたらしい。支援さえすることもなく最近のオレはイベントのときにしかそこを訪れなかったが、そこで出会うHMちゃんは必ず酒を呑んでいて、酒臭い息で絡らんできた。オレは苦笑いしながら「呑み過ぎだぜ」って言い放ったが、それでも、運動を離れて時間が経ちすぎたオレの知っている数少ない同志の一人だったから、会うたびに話をしていた。もっとも酔っぱらいのHMちゃんはヘベレケになり何を言ってるか解らなかったのだけど……。
 今年の越冬集会を訪れたとき姿を見たのだけど、何故かしら話はしなかった。そのときどきで話さなくても別にかまいはしない。そんなことしょっちゅうである。次に会ったときまた声をかければいいさと思っていた。喋ったとこで酒に呑まれたHMちゃんとは、まともな会話にならないしな。
 今回入院したことも知らなかった。病名も知らない。
 役所によって決められた葬儀屋に杓子定規に配送された亡骸を取り戻し、HMちゃんが住んでいた都市高速の下に置かれた。左も右も上さえも目まぐるしく車と人と電車が行き交う都市のど真ん中に「ナマの死体」が収められた棺桶が置かれている。もともと周囲を目まぐるし行き交う人々は箱がけの家が建ち並ぶその村を、見てみぬふりか、本当に視線に入らないのか、立ち入ることなどない。今そこに、HMちゃんの亡骸が眠る棺桶が置かれ、風に吹かれているなど知る訳もない。
 都会のど真ん中、寒風に晒され箱のなかに安置されたHMちゃんとの別れを惜しむ。
 オレは仕事の帰りに高速の下へ訪れた。
 多くの青カンと少しの支援が棺の前でたむろしていた。
 数人と話をした。
 Mは「おまえが早く夜回りに来ないからHMちゃんは死んでしまったんだ」と泣きながら、オレを責めた。
 「人は死ぬもんだな」とだけ答えた。


画像



 棺の扉をあけ顔を覗き込んだ。
 ほんと、「寝ているよう」という言い古された表現が当てはまるな。目が開きそうな気がする。
 しかも酒も完全に抜けて落ちついた顔だ。十何年振りかにちゃんと話ができそうな気がした。
 HMちゃんの「生」はどうだったんだよ?
 青カンだって、悪いことばかりじゃねぇだろ。楽しかったよな。ここは楽しかっただろ。
 それにしても、死んでも青カンだな。土の上で風のなかだ。
 フフフ、なんか、おかしいだろ。死んだら寒さも冷たさも感じないのかい?
 今夜は、寒い夜の風のなか、仲間に囲まれて青カンかぁ。いいもんじゃねぇか。
 なんだかよ、みんなで温めあってるみたいで。
 こんなに仲間がいるんだもんな。ここにいる連中に義理でいる奴はいないさ。
 ここは自由だ。居るも居ないも。
 居たいからいるんだろ。居たいやつしかいねぇよな。
 HMちゃんと別れるためにいるんだな。
 ところで、そっちではTKちゃんとは会えたのか?
 まあ、オレもそのうちだからさ、また話そうや。

 ビラに書いてある役所の用意したビルのなかの葬儀にゃいかないよ。
 オレはもともとセレモニーもイベントも嫌いだからよ。
 オレたちは、ここ風のなかで出会った。ここで話して、ここで動いた。
 だから、ここで別れるのが一番だ。
 屋根も床も壁もないけど、説教も、お経も、何もないけど、
 風は吹いてるさ。風を感じることはできるさ。
 だから、ここを最後にしたいな。
 じゃあなHMちゃん。
 TKちゃんによろしく言っといてくれや。
 

 

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コメントすべきかどうか逡巡しつつ...

またコメントしても、書くべきこともないのだけど...

私の見知らぬHMさんは、幸せだったのでしょうか?

いや、そんなことはdr.stoneflyさんにもわからないか...

dr.stoneflyさんはHMさんを支援していたんですか? それとも支援されていたんですか? 

>Mは「おまえが早く夜回りに来ないからHMちゃんは死んでしまったんだ」と泣きながら、オレを責めた。

MさんにとってHMさんは必要な人だったみたい。でも、dr.stoneflyさんにとってはそうでもないような。

これは責めているんじゃありませんよ。必要ではなくても、居てくれれば嬉しい人がいる。私にとってdr.stoneflyさんもそんな人ですし、それでいい。そんな関係もまた「いい関係」だと思います。

dr.stoneflyさんと「いい関係」だったHMさんのご冥福をお祈りします。
愚樵
URL
2009/02/16 06:11


愚樵師、コメントしにくいだろうエントリーにコメント感謝。

>dr.stoneflyさんはHMさんを支援していたんですか? それとも支援されていたんですか?

これなんですよ。支援とか当該とかいう言葉(観念)を使うからややこしくなる。もしかして市民運動のなかでは「関係」に合理的理由を求めたのかもしれない。それでも、それはとっかかりだけで、あっという間になくなった、、かな?、どうだろう。それでも「運動を進めるうえ」で、時にそれぞれの位置づけなんかを持ち出したなぁ。この辺は考えどこですがねぇ。

ほんとうの意味でのいい関係は日常的に運動から離れてからかな。なんとなく感じて頂いた関係です。それがを「いい関係」というのかもしれないな。
dr.stonefly
2009/02/16 09:16
この「いい関係」は義理や金や体裁で繋がらない、いい関係だと感じてます。自由で、床も壁も屋根もなく、風に吹かれているような。(よけい解りにくいな。何と言っても吾は詩人なので、、すみません。)

>私にとってdr.stoneflyさんもそんな人

ありがとうございます。いままでのように「いい関係」ってことさえ意識しない関係でいたいですね。

dr.stonefly@つづき
2009/02/16 09:16
はじめまして。
素敵な仲間を一人喪われたのですね。
前に読んだ湯本かずみ(漢字忘れた)さんの本のラストを思い出しました。
少年たちが、仲良くなったお年寄りの死にショックを受けつつ、でも、あっちに知り合いがいるんだよな、って言う場面ね。「それってすごくこころ強いよな」って言ってた気がする。

すみません。うろ覚えで。

何が言いたいのか自分でもわかんないです。
風の中で出会ったって言葉が胸に刺さりました。
私にも風の中で出会った仲間がいました。
あの風は今も吹いてますよね。
のぶらはむ
2009/02/19 04:52

のぶらはむさん、はじめまして。
コメントありがとうございます。
湯本香樹実の本は「夏の庭」でしたっけ? 確か前に読んだ事がある気がしますが、ラストシーンは覚えてません。
またいつか読んでみます。


>私にも風の中で出会った仲間がいました。
あの風は今も吹いてますよね。

たぶん、HMちゃんの風はワタシのなかで吹いています。
ワタシの風が吹いていたとしたら、その風にはHMちゃんの風もそのほか多くの「いい関係」の風も吹いています。
個々の風ではなくて、人間という生命の風があるとすると、個々の風を紡いでずっと途切れずに吹いているものかもしれない、とふと思いました。

もちろん、のぶらはむさんが出会った風は、今ものぶらはむさんと共に吹いているのではないでしょうか?
いつか、のぶらはむさんが死んでも誰かのなかで吹いているでしょ。
dr.stonefly
2009/02/19 11:47

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